肛門嚢について
イヌとネコには肛門の横に、においのする液体を分泌する腺が左右一対あります。
この腺は、袋状をしているため、「肛門嚢」といわれています。
この肛門嚢に導管が繋がっていて、肛門の粘膜に開口しています。
肛門嚢は、肛門を時計の文字盤に例えると、4時と8時の場所にあります。
肛門嚢は、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間に存在するため、
排便や興奮した時など肛門が強く締まることにより、中の液体を分泌しています。
正常な分泌液は、液状〜クリーム状で、色は褐色、キレイなクリーム色であることが多いです。
加齢により、この分泌液の性状が変化してきます(サラサラの液体ではなく泥状〜粘土状など)。
肛門嚢の炎症について
この肛門嚢に炎症が起きることがあります。
肛門嚢に炎症が起きているときは、肛門を気にしてなめたり、
肛門付近の皮膚が赤くなっていたり、お尻をこすっていたりなどといった症状がでることがあります。
また、分泌液のニオイがいつもより臭かったり、赤い色をしていることも多いです。
炎症が重度になると、蓄膿をしたり肛門嚢が破裂してしまうこともあります。
実際の症例(ネコの肛門嚢破裂)
右の肛門嚢が重度な炎症を起こして破裂しているネコです。
家では、お尻を気にしてずっとなめていたそうです。
毛が生えているのでわかりにくいのですが、肛門の右下より出血があります。
毛を刈った後の写真です。
肛門の右下の領域が広い範囲で穴があいています。
肛門嚢に重度な炎症が起きた結果と考えられます。
実は、この子は過去にも何度か同じような状態になったことがあります。
くりかえし肛門嚢が破裂してしまう場合には、手術が必要です。
炎症をコントロールするために内科治療をした後の写真です。
自壊した部位が大分キレイになっています。
しかしながら、肛門嚢に繋がる導管が損傷を受けていると考えられるため、
今は見た目上キレイでも再破裂の可能性が高いため、手術をすることになりました。
この写真は手術前に麻酔をかけて手術部位を消毒したところです。
皮膚に切開を加え、損傷を受けた部位を切除した後の写真です。
破裂した肛門嚢は、導管と一緒に摘出しました。
肛門の括約筋はできるだけ愛護的に扱って、温存してあります。
真皮と皮膚を縫合した後の写真です。
皮膚や肛門のつれはありません。
術後は肛門の機能に障害もなく回復しました。
繰り返し炎症をおこしてしまう子には手術をして、肛門嚢を摘出してしまうのも治療の1つです。
当院では手術を行う際、
血液検査、胸部X線検査を行い、
術前にリスク評価を行っています。
東大和獣医科病院
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